Frost Columns

昔から霜柱を踏むのが好きで、今年も修論を書いていた時期、中庭にできた霜柱を見つけては踏んで遊んでいた。
そんな折、ふと不思議に思ったことがある。
 
[1]地面は乾いていたはずなのに、この大量の水分はどうやって集まったのか?
[2]どうしてこんな形状になるのか?
 
霜柱が発生する仕組みなんて考えてもみなかったけれど、案外面白そうだ。
表面張力、毛細管。キーワードになりそうな単語は浮かぶものの、全体的なプロセスまでは想像が及ばず。
修論から逃避したかった私は、ネットで詳しく調べてみることにした。
否、これは逃避では無い。
純粋なる探究心に基づいた行動なのだ。

 
結論から言えば、霜柱を構成する水分は地中から地表へと染み出してきたもので、
地表付近で凍結した小さな氷を核に、後続の水分がその核の底面に触れて繰り返し結晶化が起こることで
柱状の結晶へと成長することになるらしい。
結晶化の際の力ってのは案外強いので、周りの土を押しのけて綺麗な形になるのだろう。
 
しかし依然として[1]に関しては疑問が残った。
水分を運搬する駆動力は如何にして発生したものなのか。

これはやはり、表面張力が関係しているようだ。
といっても、単純な毛細管現象で染み出しているわけではないらしい。
自分でも思ったが、上のような理由なら、普段から水が染み出して地面が濡れていてもおかしくないものね。
 
 
そもそも表面張力とは分子同士が引き合う力、分子間力に由来するもので、
液体の温度が高くなるほど分子の運動が活発になり分子間力を相殺するため、結果として表面張力は低下する性質がある。
つまり、温度が低いほど表面張力が強くなるわけだ。
したがって液内部において温度の不均衡が発生すると、すなわち表面張力に不均衡が発生することになる。
これがどうも件の駆動力の元になるようだ。
(ちなみに、表面張力の不均衡により発生する対流をマランゴニ対流というらしい)
 
ここで、霜柱が発生する環境について考えてみよう。
霜柱ができるのは通常、夜の間である。
夜間の気温、地中温度に注目すると、気温低下の影響や放射冷却などにより、まず地表面から冷えてゆくことになる。
したがって地中では温度に勾配が発生し、地表に近い水分ほど冷え、表面張力が強くなる。
また、水分は土粒子の間隙という毛細管ネットワーク上に存在しており、壁面である土粒子にも吸着(この表現が正しいか不安だが)している。
総合的には、土粒子にしがみ付きながら水同士が綱引きをしているようなものと見る事ができるだろう。(たぶん)
結果、COOLでハイパワーな地表側に水分が引き寄せられることになる。
こういった経緯で、地表に水分が運搬されるらしい。
 
以上のことを総合すると、霜柱は地中が0度以上の状況で、地表が氷点下に冷やされた時に発生するということが言えるようだ。
また、土の性質(粒子の粗さなど)も重要な要素になるだろう。
いやはや、なかなか楽しめた。
 
余談だが、霜柱について色々調べているときに、「夜間から明け方にかけて地表面が冷やされると〜」という下りがいろんな場所で引用されまくっててちょっと笑った。
オリジナルは三重大准教授、渡辺先生のページだろうか?
『霜柱 温度勾配』等のキーワードで検索するとわんさかHitしたり。
 
 
追記:
無重力化で球状になった水に、何らかの形で触れずに温度勾配を与えた場合、一体どうなるだろう?
また、その状態で冷やして凍らせた場合、どんな風に氷になっていくだろう?
想像してみるとちょっと面白いかも。